どうしよう、どうすれば 訳解んねぇ [壁]は完璧じゃなかったのか!? 走る 走る 走る 早く、皆に知らせなければ 少年は走った。 街の中心へ向かい、兎に角逃げろと叫びながら。 高度文明の発展したこの小国は、滅ぼされる。 鉄壁だと思っていた国を守る[壁]は破られ、侵略者に蹂躙され、男も女も子供も老人も関係なく、 全てが壊される。 「逃げろ!逃げろ!逃げろ!」 叫ぶ 道行く者が振り返るが、そのうちの何人が己の言葉を信じただろう。 嘘でも何でもいい。 とにかく逃げろ。 この国から、この場所から、今から起こる、恐ろしい惨劇から。 嘘 つ き の 代 償 時は17XX年 現・ドイツ領土に小さな小さな国が存在していた。 鉱山に囲まれたその国は世界に殆ど認識されなかったが、周辺の国にとっては脅威であった。 まず、山間にあるということもあるが、更に[壁]で国全体を囲み外界とは決して関わりを持たない。 その国の中の様子を外界の者は誰一人として知る事は出来なかった。 様子を窺おうにも山と[壁]に護られていて外からは確認ができないし、国の中に入れたとしても戻って来る者はいなかった。 外から解る情報と言えば、壁の上から絶え間なく立ち上る煙、低く響く轟音… 人々は中で悪魔の儀式が行われている、入った者はその生贄として捧げられているのだと実しやかに噂した。 また、彼らは神の御使いであり武器を作り、磨き上げ裁きの時を待っているとも。 入る事も出来なければ出る事も適わない。 入れば最後、出る事は許されない。 悪魔の国…神の国…人々の目には様々な姿で映った。 国の名を『カナン』という。 真実を知るのは カナンの民 のみ >>next |