「ね、ね。君はだれ?」
グラビティは折った膝の下で自分を見上げる小さな友人に首を傾げた。
「俺はマグネ。グラ、君の友達だよ」
こくこく、とグラビティが何度も首を縦に振る。
「し、知ってる。でも、で、俺、よくわかんない」
「今までも、俺たちはずーっとグラの傍に居たんだよ」
「し、しってる…でも、よく、わ、わかんない」
困惑しているグラビティにどう言い聞かせれば良いのか考えあぐね、マグネは腕を組んだ。

マグネは、他から見れば普通の鼠だ。
しかし、グラビティの瞳には話をしてくれる友人の姿に見える。
そして、その友人は頭が良いらしい。

「そうだなぁ…グラ…そうだ、グラ。俺たちは君が寂しくないように、傍に居てあげられる友達なんだ」
「う、うーん…」
グラビティは解った様な、解らない様な、曖昧な返事をした。
「グラ、これからグラは長い旅に出なくちゃならない。今まで一緒にいてくれたジャックやエレクトロ、それにギガを探さなくちゃ」
「み、みみみんな…」
思い出したように、グラビティは慌てて辺りを見回した。
「ど、どこにいっちゃったの?み、みんな…ジャック、エレクトロ、ギガ、アーミー、エグゼ…」
指折り同じ部屋に居た子供達の名前を数え、グラは不安そうに眉尻を下げた。
「そうだね、みんなバラバラになっちゃったんだ」
「やだよ、お、俺、ひとりじゃなんにもで、きない…」
「だーかーらー。一人じゃないよ。寂しくないように、俺が傍にいてあげるんだからね」
がっくりと肩を落とすグラビティを元気付ける様にマグネはグラの膝を叩く。
「さて、まずはここがどこなのか…ほら、グラ立って立って。座ってても何にも始まらないんだから」
「うん…」
「グラ、みんなに会いたくないの?」
「あ、あいたい…」
「自分の足でしっかりと立って。それから、しっかりと歩かないと…望むものは勝手に歩いてこないんだから」
「…うん…」
よいしょ、とグラビティは重い腰を上げる。
今まで、一人で行動することなんてした事が無かった。
『今まで』というのには少し語弊がある。
【IXION】に入ってから』だ。
グラビティも例に洩れず【IXION】にはその能力を見込まれて招かれた。
それからは誰かがずっと傍に居てくれたのである。
それまでは…やはり一人だった。
一人、というのにも語弊があって、グラビティはそれまで鼠たちと過ごしていた。
知能が遅れているからという理由からなのかグラビティは幼い頃に捨てられたらしく、町の塵溜めのような場所にいた所を博士に拾われた。
博士が何故そのような場所に足を運んだのかというと、それには何か理由があったようなのだがグラビティは知らない。
聞かされたことも無いし、聞いたこともない。
グラビティは博士が好きだった。
グラビティにとって博士は恩人であり、父のような存在である。
人間の言葉も喋れないグラビティに言葉を教え、今では少しだけれど読み書きもできる様になった。
住むところ、着るもの、食べるもの…全てを与えてくれる博士はグラビティにとって『優しい人』『いい人』だ。
「博士…あ、あわなくちゃ…博士に、あわなくちゃ。みんなと、あと、博士にあわなくちゃ」
グラビティはたどたどしく歩き出す。
コートをしっかりと羽織り直し、マグネを大事そうに抱えて。
「そうだね、博士にも…みんなに会わなくちゃ」
コートの中からもぞもぞと顔だけ出し、マグネは頷いた。
そのコートは…博士から初めてもらったものだ。
何も身に着けていなかったグラビティの肩に優しくそのコートを羽織らせ
博士はこういった。

『私は、君に会いにきたんだよ…    君』

博士は自分の事をなんて呼んでたかな。
言葉の解らない自分に、テレパスで呼びかけてきた、優しい人。

グラビティはみんなを探す旅に今、歩き出した。











to be next stage
















































































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