コ ポ コ ポ コポ コポ コポコポコポ 「まだ眠るのか…」 水槽の向こう コポ 水泡の向こう 「起きろよ」 コポ 目覚めよ 「なあ、そろそろ退屈だ」 コポ 厚い硝子越しに問い掛ける。 冷たいフィルターに手を当て、目を細め 気泡の向こう 水に隔たれ 彼はいた。 明かりは点いていない 水槽のライトだけが仄暗い部屋を青く染める。 気泡の発生する音が返って静寂を際立たせていた。 水槽の前に佇む男…ボルテージはぽつり、ぽつりと水槽に向かって話しかけていた。 ここに来る前だが…物心付く頃には研究員に囲まれていたので、父と母の顔は知らない。 別に見たいとも思わないし、見たところで全く興味が無い。 「ミニマリアン…」 水槽をじっと見上げる。 中には顔立ちの整った青年が眠っていた。 ふわりと遊ばれる金糸がその一本一本が青いライトに照らされて光る。 閉じられた瞼から伸びる睫毛が影を作り、水流と共に揺れ動く。 蒼白い頬、肋骨の浮いた身体は痩せ細り、辛うじて口に繋がる酸素吸入器からの空気が生を感じさせる。 昔から…それこそ、物心ついた頃からそうだった。 もしかしたら、生まれた時からしれない。 ボルテージには彼…ミニマリアンしかいない。 コポ コポ コポ 静かに上り続ける気泡 静かに眠り続ける彼 静かに待ち続ける こ ごぼっ >>next |